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第2話  

作者: 飛鳥と魚
立ち去ろうとした彼は、思い直したように振り返り、私を睨んで一言、警告を残した。

「変な真似はするな。お前は、一生、江口家に借りがあるんだ」

扉が乱暴に叩きつけられ、乾いた音が鼓膜を刺し、耳の奥がずきりと痛んだ。

私はぼんやりとしたまま、マンションの敷地を出た。夜の冷たい風が頬を切るように吹きつける。

空腹で胃がきりきりと痛む。あてもなく夜の街をさまよっていると、少し先のブランド店の前に一台の高級車が止まった。

車のドアが開き、父の誠一と兄の真琴が左右から朔菜を守るように降ろす。どこかにぶつけやしないかと気を揉んでいる。

その後ろに母の美蘭がついてきて、やさしく彼女のドレスの裾を整える。その手つきは、まるで朔菜が世界でいちばん大切な姫であるかのようだった。

三人は彼女を囲み、灯りのあふれる店内へと消えていく。

私は一文無しで、影の中に立ち尽くし、空腹の痛みを抱えたまま、その光景を見ていた。

あの甘やかし方は、私の記憶にあるものとまったく同じだ。

けれど、その愛だけはもう、別の人へとすっかり移ってしまっていた。

手のひらで大事に育てられたのは、私のはずだった。命と引き換えにしてでも守ると、彼らが言った娘。

今の私は、彼らの口にのぼる罪人で、彼らにとって恥であり、触れたくもない存在だ。

鋭い痛みが胃の奥を貫き、もう立っていられず、私はその場にうずくまった。冷たい汗が全身を濡らしていく。

私はどうにか足を引きずりながら、「家」と呼ぶしかないあの賃貸の部屋に戻った。

家というよりは、息苦しい檻だ。

壁には、客の残していった精の跡がまだ乾かずに残っている。

いつの間にか真琴が来ていた。ソファに腰を下ろし、彼は余裕の笑みを浮かべながら私を見つめる。

「どうした?今日の客に不満でも言われたか?死人みたいな顔してるな」

彼は腕を組み、舌打ちを重ねる。

「夕乃、言っちゃなんだが、お前のその有様、妙にそそるな。オッサン連中に好かれるのも無理ないね」

私は何も言わず、壁に手をつきながら、一歩ずつ奥へ進む。

私が相手にしないのを見て、真琴は瞬時に逆上し、駆け寄ると髪をわしづかみにして、私の体を床に叩きつけた。

「黙ってんじゃねえ、聞こえねえのか!

何を気取ってんだ?今のお前はただの売女だ。売女は売女らしくしろ!」

頭皮が裂けるような痛みに、私は頭を抱えて身を震わせた。

それでも真琴の怒りは収まらず、何度も私の体を蹴りつける。

「死んだふりか?そんなことで逃げ切れると思うな!いいか、お前が朔菜に負わせた借りは、一生かかっても償えないんだ!

お前があの日あんなことしなきゃ、朔菜が迷子になることも、外であんな苦労をすることもなかったんだ!」

蹴りが入るたび、痛みは体ではなく、胸の奥に突き刺さる。

もう、泣く力さえ残っていない。

そのとき、向かいの部屋の高橋恵子(たかはし けいこ)がゴミ出しに出てきて、部屋の中の様子を見て思わず声を上げる。

「ちょっと!若いの、何してるの!その子、妹でしょう!」

彼女は駆け込んで、真琴を引きはがそうとする。

「ちょっと!やめなさい!鼻血が出てるじゃない?こんなに出てるわよ!」

手で顔を拭うと、掌がねっとりと赤く染まる。

真琴はその光景に面食らって動きを止め、私の血だらけの顔を見てわずかにうろたえた。

「どうしたんだ?」

痛みで意識が遠のき、私は壁を支えにどうにか立ち上がる。

「大丈夫」

恵子は目にいっぱいの不安を浮かべ、落ち着かない様子で真琴に向って叫んだ。

「早く妹を病院へ連れていきなさいよ!顔色がひどいじゃないの?」

真琴は気まずそうにその場に立ち尽くし、強がるように言う。

「大したことじゃない。こいつは図太い、死ぬようなタマじゃないよ」
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